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BOOK review Apr. 2022

4月本の感想は「20代で得た知見」を

読んだため、企画に沿った読了コメントを

心掛けてみた。まずはきっかけとなった

作品の感想から。


📘

20代で得た知見


私は表現できないことを苦しんで

文なり絵なり、それぞれの

表現媒体で表現する人のことこそを

「作家」と呼ぶと考えている。


表現できない曖昧な感覚は、

神々しさがあるからこそ

分かりやすく表現すると

陳腐になりやすい、と思う。


だから本書のように自分の見解を

言葉にして書き、

世の中を語ることには本当は

どうも信用ならない、

という姿勢になってしまう。


しかしながら本書では、作者が経験

また見聞きしたことの記録として

多くのエピソードが書かれており

誰しもが重ねられる瞬間を

1項目は見つけることが

できるようになっていた。

実際、私にも印象に残った言葉があった。


そのため敢えて本書の言葉をただ

鵜呑みにするのではなく、今月読んだ

別の本と照らし合わせることで

世の中の法則を考察してみたい。


そこで、各読了作品に本書引用を

添えてみることにした。

この紐付けでさらに深く学べたら

面白いと期待している。


📗

永遠は存在しないが、

永遠のような一瞬は集める価値がある。


時間をめぐる哲学の冒険


時間は実存するのか、という議論に対し

出来事があって可視化されるもの

が時間だという意見に共感した。


だからタイムリープして

過去や未来に冒険できたら

どんなに楽しいかと思いつつも

概念であるため物質的には不可能だと思う。

というより、過去・現在・未来と分類し

時間は経過するものと定義されているが

そもそもそれは人間が決めたもので

時間の存在定義は揺らぐと考える。


しかしながら、タイムリープは

概念では可能ではないか。つまり

物質的移動ではなく、

過去や未来の出来事を空間で

再現可視化することを指す。


加えて本書にて物事の始まりには

前提としてそれを始めた要素があるため

始まりは始まりでは無い、

と説明していたところが印象深い。

そう考えると全ての一瞬が

次の一瞬のためのきっかけとなり

「時間」を構成するかけがえのない一瞬

となると考えられる。


📕

女は生き様


下北沢について


私にとって下北沢は

飲食店から洋服屋さん、劇場、本屋など

バラエティ溢れる町かつそれらが

引き継がれている町で、行く度に

独特な雰囲気を感じることのできる町

というイメージだった。


それは何故か。多分

バラエティ溢れる人々が訪れた歴史が

刻まれてきたからだと思う。

本書では吉本ばななさんの下北沢での

生活や人生が赤裸々に書かれているのだが、

お店や人々のエピソードは深く語られずとも

どれもユニークでワクワクさせられる。


町とはひとつの社会だから

町の住民になるということは

町に属するということだが、

町は町でも下北沢では住民が

決まった社会に属さずに

住むことができている気がした。それは

バラエティ豊かな人々で構成された

バラエティ豊かな町だからだと思う。


何かに属した生活は楽だ。

でも一度きりの人生、安心より面白さ

というのが私のモットーだから

下北沢は本書同様、私にとって

行く度にワクワクさせてくれる町。


今回、本書を「女は生き様」の

知見に当てはめた理由は

町と女は似ていると思ったから。

町も女も歴史や経験でその存在は

語られていると思っている。


また、犬と飼い主が似るのと同じ原理で

町とそこに住む人々は似ると思う。

特に昔ながらの商店街なんかがある町では

買い物をしている町のおばさんたちが

町の代表ともいえる存在だし。


確かに今は主婦も主夫もいる時代ではある。

でも子どもを産む母なる女と、

沢山の住民を擁する町には

"包容力"という点で相通じる気がする。


愛される町には愛すべき女の生活があり、

面白い町には面白い女の生活があり、

夢を見たい女には夢を追いかけられる町

がきっと待っていると思う。

実際"下北沢"とその町に引き寄せられた

"吉本ばなな"は似ている気がした。


将来自分はどんな町を選び、

どんな町に選ばれるのだろうか

と思い馳せられた。


📘

ものすごく悪い出来事が起きたら、

1章終わり、と言う。


 白雪堂化粧品マーケティング部

 峰村幸子の仕事と恋


人生の区切りは自分が決めるもので

結局自分の人生は自分しか切り拓けないもの

と分かったし、必死に一生懸命やれば

何事も相手に伝わるのだと思った。

諦めるくらいなら当たって砕けろ、と

よく言うけれど、まさにそう。


それでも上手くいかないことはある。

実際小説の中でも最後まで消化できない

モヤモヤする事柄が幾つもあった。

だからこそ、危機や失敗が起きたら

「パッ」と切り替えて新しいアイデアで

挑戦していく必要があると思う。


スッキリしないことに対して腐らずめげず、信念を曲げずに仕事をするためには時に

思い切った決断をせねばならないのかも。


📗

敵だと思ったものは、

大抵、本当の敵ではない。


エリザベスの友達


タイトルや表紙の挿絵からは

予想できなかったが老人ホームを

舞台としたストーリーだった。しかし

認知症介護のどろどろした話とかではなく

"認知症は自由"でなりたい自分になること

と表現されていた。まるで貴族のように

大切に扱われるご老人たちにとって

良い介護施設は天国なのかもしれない。

そう考えると抗えない病や事件が悪い

のではなくそれに至らせた別のものが

そもそもの原因だと思わせられ何故だか

気持ちがすっとした。それは多分

作者の村田喜代子さんの言葉選びが

世の中のあらゆるモノを

別の角度から見たからだと思う。


2022年度の東大入学式でスピーチをした

映画監督の河瀬直美さんが

「悪を存在させることで

安心していないだろうか?」と

問いかけて波紋を呼んでいたが

意図が間違われ捉えられている気がした。

河瀬さんは決して「侵略戦争が悪ではない」

などと発言したわけではなくて、

結果として戦争を起こしてしまっている

世界のトップたちや大人たちの問題が

そもそも「戦争」の根源であるのではないか

と問うたのだと思う。


悪や敵は表面的ではなくて

別のところにそもそもの問題があると

理解している必要がある、ということ。


📘

王道の人生から外れざるを得なかった時、

人生の本番は始動する。


ミュゲ書房


良い本は著者、編集者や本を世に送り出す人全員の力で読者に届いていて、それを辿るだけでも濃厚なストーリーがあると思う。

本書では、まさにその物語を

冒険譚のように読むことができた。


その道のりは想像以上にハードで

作品を愛し広めたいという気持ちを

関わる全員が持つが故に、

それぞれが持てる全ての技術や人脈などを

最大限に発揮することができていた。


例え回り道となっても

真の自分を見てくれない人に

時間を浪費するより、

見てくれる人を探して互いの良さを

活かせる人と仕事をしたいと思わせられた。

それは最終的にやり甲斐を感じ、

成功につながると思う。


私は読書が好きだけど、もっぱら

書店や図書館を利用しており

ネットの創作物には疎い。そのため

本書は元々ネットで公開されたのち

人気から書籍化に至ったと聞いても

恥ずかしながら全く知らなかった。

ネットでは誰でも気軽に

創作物を発信できるところが良いと思う。

そして書くことも好きなので興味が湧いた。

だけれども、きっとクリエイターや

作品数は星の数なんだろうな。

その中で見つかる作品の凄さたるや。

本書の登場人物と作者の姿が重なった。


📗

退屈は生活の毒


魔法がとけたあとも


短編5つとも素敵だったけれど、

特に好きなのは「花入りのアンバー」。

過去の精算のために果実酒を携えて

1人旅をする美鶴が現役を引退した

旅館の元女将のスイさんに出逢い、

封印するつもりだった幸せだった

過去から逃げずに立ち向かうことを

決める、というストーリー。

第二の人生を歩み出す点で2人には

共通があったと思う。過去は過去、

今は今、未来は未来と割り切って

年齢も何も気にせずに

今やってみたいことに挑戦する

スイさんはカッコよかった。

今立ち向かわねばならないことを

過去に縋って後回しにしていたら

人生終わってしまう。ぼーっとする

暇なぞない!と奮い立たせられた。


スイさんは美鶴に教わって始めた

Instagramで新しい自分を

創造するため、おばあちゃんながら

"20OL"と自分を偽る。

よく年を召しても気持ちの上では

"永遠の18"と言う人がいるように

活発に挑戦していればいつまでも

若くいられるのかもと思った。

私も微笑ましくキュートに

年をとれるように常に何かに夢中で

挑戦する人でありたいと思う。


「退屈は生活の毒」まで言うと

大袈裟なようだけど、少なくとも

歩みは止めちゃだめだと思っている。

その後の2人のストーリーも知りたい。


📕

1位は2位を集めた1


本屋さんのアンソロジー

 大崎梢リクエスト!


よっぽどの田舎でない限り、恐らく

1つの町に2つは本屋さんがある。

チェーンの在庫が揃う、大きな書店と

店主の人柄が出ている中小規模の書店。

確かに新刊、特に人気の雑誌を

確実に手に入れたい時には在庫がある

店舗の方がいいかもしれない。でも

「読む」本を買いに行く時には

私の場合、個人書店や中小規模の書店を

選びがちだ。なぜなら、ただ本を

いち早く手に入れるなら直接店舗に

足を運ぶ必要性がないと思うからだ。

本の装丁、分厚さやポップに加えて

手に取るお客さんから本に

出会いたい時にはそれらの良さをどれも

できるだけ味わえる書店の方がいい。


本書にはそんな、個性のある書店での

エピソードを垣間見ることができる。

面白い企画で「大崎梢リクエスト」と

サブタイトルにあるように、作家の

大崎さんプロデュースで10人の

作家たちによるオムニバスとなっている。


印象に残っている作品の1つは、

「ロバのサイン会」で乗馬をする時

たまに馬たちが良いタイミングで

頷くことがあり、人間の言うことを

理解しているのかもしれないと

思ったことがあったため共感した。

言葉が通じなくても一生懸命に働く姿や

伝えたいことを一生懸命表現すれば

動物でも人間でも見ていてくれる、

人(動物)はいるのだと思った。そして

一生懸命人が作ったモノから

生まれた縁は素敵だ。