開催された京菓子展を見に足を運んだ際に
その美しさから和菓子デザインに
魅力を感じ、最近興味がある。なぜなら
ストーリー性や伝統を重んじつつ、
どの時代でも斬新さを感じさせるから。
そして実は京菓子展に(早くて)次回、
公募することを目標としている。
和菓子デザインの成り立ちや形について
とらやの和菓子の展示などで勉強し
過去2015〜2021年までの各テーマにつき
1つずつ自分なりのデザインを
考えて備えてみることにした。過去には
様々な日本の古典文学が設定されているが
共通項は"禅定"が根底にあることと思う。
禅定とは真実(悟り)は言葉では
言い表せないため一人一人が自分で
体験するしかないということだという。
和菓子は目で見て、食べて味わい、
込められている思いやストーリーを
実体験できるお菓子ということを
顕著に表しているお題だと感じた。また
古典文学の1つとして、例えば
万葉集は長いため昔から"つまみ詠み"
されてきたと聞いたことがある。
だからお菓子の"つまみ食い"を想起した。
食べて"つまみ詠み"したくなる
ような作品を考えてみたい。
2021 徒然草
→桜も月も盛り、つまり満開や満月を
愛でるだけのものではない。
なぜなら心で見るものだから、
ということらしい。
それ故私が考えるのは、お饅頭の中に
桜や月を入れ込む和菓子だ。
お手前ではお菓子を頂く際には必ず
菓子切りで一口大に切っていたので
切って初めて楽しめるものもいいと思う。
蓬莱山饅頭のように、お饅頭の中に
カラフルなお饅頭が入ったお祝いのものも
あるけれどそれの日常用があってもいい。
蓬莱山は不老不死の仙人が住む場所なので
似たデザインでもあやかれないかな。
表面には三日月と桜の焼き印を入れたい。
2020 禅
→禅問答とは真意が分かりづらい
ディベートのようなもので
それ自体が修行だと言われるらしい。
大学の授業で研究発表を話し合っている
ようなイメージだと思う。
しかしながら言葉のバトルのようで
最終的には"不立文字"、
つまり言葉で答えは出ないという結論に
至り、悟ることができるという。
その白熱した模様や悟りの様子を
デザインしてみたい。
そこで気になっていた禅のことばを
使ってみる。非風非幡という言葉で
目の前の現象に動かされる自分自身を
見つめ直せ、ということだそう。
2019 万葉集
→お酒に合う和菓子があったらいいなあ、
という思いつきから、大伴家持の1句を。
「験なきものを思はずは
一杯の濁れる酒を飲むべくあるらし」
まず"験"は"しるし"と読んで
"効き目"という意味なので、よく
「役に立たない」「考えても意味のない」
という訳されることに注目したいと思う。
加えて家持の女性関係の多さから考えると
本物の愛を探し続ける人、
というイメージが湧いた。しかも
本当の恋とお家のための結婚に挟まれ、
家の結婚を選んだという。
だからこの句では家持が
その妻にも先立たれた時の
喪失感を含めた"しるし"なのだと思う。
自分が社会(家)のために
存在する理由は妻だ、と
考えていたのではないかと仮定したい。
そう考えると恋愛結婚でなくても、
家持は妻を大事にしていて素敵だと思う。
妻は妻であり、共に生き抜く
同志だったのだと思う。
句によると、悲しみから白濁したお酒を
ヤケ呑みしたとみえる。でも妻を想う
美しく儚い感じがした。
ほんのりと赤らんだ顔、散る花びらが
白濁したお酒の入ったお猪口に
映っている様が浮んだ。
2018 源氏物語
→1番好きな空蝉のデザインを考えた。
彼女は著者の紫式部に最も違い存在で
中流階級の才女だった。
光源氏のアタックに心揺れるも、
年上の男性の後妻という立場上
応えることができない状況だったらしい。
切なさと物語では光を待つ女性が多い中、
逃げ続けるところに印象が残っている。
また光は彼女が置いていった着物を
(ちょっと気持ち悪いエピソードだが)
持ち帰っている。それも踏まえたい。
2017 小倉百人一首
→大好きな小式部内侍の一句から考える。
幼いながら韻の踏み方が天才的な句で
"天橋立"と"手紙"、"未開"の要素をうまく
織り交ぜるべく地図をイメージした。
「大江山 いく野の道の遠ければ
まだふみも見ずあまの橋立」
2016 蕪村と若冲
→与謝蕪村はシンプルな山水図、
伊藤若冲はカラフルな彩色が印象深く
矛盾しているかもしれないが
シックかつ派手を目指した。
若冲の動物といえばゾウが有名だけれど
紅白を使いたいためニワトリがモチーフ。
2015 琳派
→派閥の特徴はシンプルで洗練された
モダンな図柄だと思う。
特に国宝の風神雷神図や燕子花図屏風は
現在でも通ずるお洒落さを感じる。
更に以前、美術館で琳派の作家たちは
印象派と同じくアウトドアで
自然界からアイデアを得ていると
学んだことも生かした。また、
「紅白梅図屏風」をイメージしてみた。
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